第1章 魔法のジャム

 第6話 完熟葡萄のジャム
 原農園さんの、完熟ぶどうは、生で食べて、とてもおいしいものです。


実は無理をいってナイアガラの未熟なものを一度送って頂きました。
この時のpHは約3.5 糖度は15% この段階で、ジャム化するのには、既にpH
は高すぎます。この時もただ煮込んだだけでは、濃度は上がりましたがジャム化せずレ
モンを加えてやっと、ジャム化しました。

しばらくして、食べごろだというナイアガラを送って頂いたところ、pHは約3.6 
糖度は19% pHは誤差範囲内の差でしたが、味、食感、そして、なにより香りが違
います。程よい甘さを酸味、そしてなにより、口の中に広がる香りに、私たちは魅了さ
れました。この段階でも試行しましたが、もちろん、固まりません。最低限のレモンを
加えてジャム化させましたが、どうしても、レモンの味と香りが残ります。

様々な、酸性の食品をくわえましたが、やはり、味や香りが合わずにうまくいきません。

そして最後に、クエン酸を加えてみました。するとどうでしょう、0.1%以下のクエン酸
で、きれいにジャム化し、味も、香りもいくら比べても分からないほどの仕上がりです。
クエン酸は葡萄にもともと含まれている成分なので、考えてみれば、当然のことかもし
れませんが、当時は本当にうれしかったのを覚えています。もちろん、クエン酸自体も
国産で、信用できるメーカーの純度の高い食品用を用いました。

次に、ペクチン量を推測する必要があります。ジャムが完成した状態で、ペクチン量が
1%以上なけれなりません。ところが、ペクチンの含有量は、果実の熟成度と共に変化
する上、ペクチンそのものの含有量を測定する簡単な方法はありません。

そこで、私たちは、葡萄のpHと糖度を測定し、どれぐらいの濃縮が必要か実験し続け
た結果、やっと、葡萄の熟成度に応じたジャムのレシピを得ることができました。

もちろん、加える砂糖も吟味しました、一般的にフルーツの味を乱さないといわれるグ
ラニュー糖、念の為に、白双糖、中双糖、三温糖、黒糖、そしてもちろん、日本独自の
砂糖、上白糖、これが、白砂糖がおいしいんです。不思議なものですね。グラニュー糖
が世界標準な砂糖なのですが、成分的には、白砂糖はグラニュー糖に水分と転化糖(ブ
ドウ糖と果糖の混合物)を添加した日本独自の砂糖といわれていますが、そのルーツは
オランダに由来する技術のようで、オランダはこの技術で、おいしい菓子の国となった
そうです。スクロース(ショ糖)むきだしの状態のグラニュー糖よりも、フルクトース
(果糖)で表面を覆った Basterdsuiker の方が、よりこくのあるやわらかい甘みを
もち、他の炭水化物やフルーツとのなじみもよく、結果的に少量で済むので体にもよい
結果となるのかもしれません。

確かに、味に好みはあるものの、グラニュー糖で作ったジャムには、舌に違和感、
(甘さが突き刺さる感じ)があり、グラニュー糖を加える前の甘さと明らかに違う様
に感じましたが、白砂糖の場合はそれがなく、ぶどう本来の甘みを延長した感じでし
たので、上白糖を選びました。

さて、これに、CAMUS NAPOLEON EXTRA を加えて瓶に入れて一晩
寝かせました。

完璧です。いえ、それ以上です、あの、初めて作ったナイアガラジャムよりも美味し
いのです。

更に、更に、原農園様に分けて頂いた、レッドナイアのほうはというと、それ以上に
おいしいのです、しかも、なんと、香りはまるで、花の香り、なんで、ぶどうなのに
花の香りなのでしょう、 私はジャム好きでさんざん食べてきましたが、こんなにお
いしいジャムは初めてです。

でも、たいへんなことに気づいてしまいました。葡萄を約1/3にまで煮詰めますの
で材料費だけでも大変です。その下ごしらえも、葡萄の一粒、一粒から、種を抜き取
り、ますが、果肉の穴は小さい方が、おいしいのです。確かめました。更に、皮は麺
棒でおして、皮の裏のおいしいところ、そうです、あの生食のときにおいしいあの部
分をあらかじめとって、果肉に混ぜて煮込むと、なお、いっそうおいしいのです。
あとで、茶巾で煮込んでエキスをだせば、同じと思っていたのですが、全く違います。

これでは、絶対に、高価なものになってしまいます。

お店を開いて、やってゆくなんて、とても無理でしょう。


でも、私の家族はいってくれました。

   きっと、わかってくれる人もいるよ、気にいってくれる人もいるよ。
   やってみようよ。

だから、わたしは、このお店を開くことができました。

今までも、今このときも、たくさんの方々に助けられながら、続けています。

しかたないですね、なにせ、魔法のジャムに魅せられてしまったのですから。



これで、第1章 魔法のジャムのお話しは、おしまいです。


第2章では、「ジャム工房 狐の香り」 流の、ペクチン無添加ジャムの作り方につ
いて、のお話しです。

第4話で、お話しした様に、ジャムを作る鍵は、ペクチンにあります。そしてその
ペクチンはそれぞれのフルーツ、植物によって違います。ペクチンは、網目のよう
に成長しジャムの構造を作りだし、その中に、糖質や、味、香りまでも、きれいに
並べて、その独特の味、食感、香りを作り出します。

つまり、素材の種類だけ、レシピが存在するようなものです。

そんな、ジャム作りに必要な、道具なども、ご紹介させて頂きます。

ご覧頂ければ、幸いです。